バゲットを何度も焼いている人ならすでに感覚的に知っている事かと思いますが、改めてバゲットをうまく焼くために知っておきたい相関関係をご紹介したいと思います。各工程において自分のベストなバランスを見つけること、増やす・減らす、締める・緩めるなどのコントロールができるようになると、自分がイメージした通りのバゲットが焼けるようになってきますので、一度おさらいも含めて整理していきたいと思います。
バゲットを焼く際の相関関係その1「加水を増やす・減らす」
まずは、加水を増やすこと・減らすことでの相関関係をみていきたいと思います。加水を増やすことのメリットやデメリット、加水を減らすことのメリット・デメリットをまとめてみました。
加水を増やす
メリット→水分が多くモチモチ食感のクラムになる。グルテンが弱くクラムに大小の気泡が入りやすい
デメリット→生地がベトベトして扱いにくく成形しづらい。生地の立ち上がりが弱くクープが開きにくい。
加水を減らす
メリット→生地が扱いやすく成形しやすい。生地の立ち上がりが強くクープが開きやすい。
デメリット→グルテンが強くクラムに大小の気泡が入りにくい。
私の経験では、バゲットにおける加水率の標準は70%としています。そこから粉の種類や理想の出来上がりをイメージして加水を増やす・減らすということをしています。粉の種類で言えば、北米産の比較的蛋白量が多い小麦はグルテンが強く吸水も良いので加水を増やす方向、フランス産や国産の比較的蛋白量が少ない小麦はグルテンが弱く吸水も良くないので加水を減らす方向で調整すると良いかと思います。
バゲットを焼く際の相関関係その2「イーストを増やす・減らす」
イースト量を増やす
メリット→発酵時間が短時間で済む。
デメリット→生地中の糖の消費がされやすく、甘みが抜けてしまう。口の中から鼻に抜ける香りが弱い。
イースト量を減らす
メリット→生地中の糖の消費が抑えられ、甘みを感じられる。口の中から鼻に抜ける香りが強い。
デメリット→発酵時間が長時間かかる。
イーストの量は標準の量というものがないのですが、パン作りをする時間が限られていて一次発酵を30分くらいで済ませたいのであれば、イースト量は増やす方向で、具体的なイースト量は1%程度かと思います。おすすめなのは、イースト量を減らす方向で、具体的なイースト量は0.1%以下を推奨します。私の場合、さらにイースト量を減らし、0.025%ほどの微量なイーストで、発酵温度は17℃、発酵時間は約18時間かけて生地を作っています。
この低温長時間発酵で作るバゲットは、バゲットを噛み締めた時の甘みを感じられ、さらに口の中から鼻に抜ける香りを強く感じられるのでおすすめです。私の息子(小学2年生)でも、通常のバゲットと低温長時間発酵のバゲットの違いを瞬時に言い当てるくらい違います。それくらい味や香りに影響するのです。
バゲットを焼く際の相関関係その3「成形で締める・緩める」
成形で締める(きつく巻く)
メリット→生地の立ち上がりが強くクープが開きやすい。
デメリット→グルテンが強くクラムに大小の気泡が入りにくい
成形で緩める(ゆるく巻く)
メリット→生地のグルテンが弱く大小の気泡が入りやすい。
デメリット→生地の立ち上がりが弱くクープが開きにくい。
この成形で生地を締める・緩めるというコントロールができるようになると、バゲット以外にもカンパーニュなどのクープや気泡など、ハード系パン全般において出来上がりをコントロールできるようになります。バゲットの見た目を気にしない方、食感を重要視したい方は、特に生地を締める必要はありません。バゲットのクープをパカっときれいに開きたい方は、生地を締める方向がおすすめです。具体的な成形方法ですが、まず生地をきれいな正方形に広げ、三つ折りをした後、奥側から1/3を巻き(1回目)、さらに1/3を巻き(2回目)最後に1/3を巻いて(3回目)とじ目をしっかり閉じると生地の立ち上がりが強くなり、クープが開きやすくなります。一方でクラムの気泡が詰まりやすいというトレードオフもあるので、その際には、最終発酵時間で調整するなどベストなバランスを見つけてみて下さい。私の場合は最終発酵は30分くらいのことが多いです。
バゲットをうまく焼くためには、仮説と検証の繰り返しが重要
バゲットはパン作りの中でも、最も難易度が高いパンだと思います。その理由として、生地が油脂や砂糖を使わないリーンな生地であること(ごまかしがきかない)、バゲット特有の細長い成形やクープ入れという技術が必要なことが挙げられます。だからこそ、バゲット焼きは奥が深くておもしろい。私はバゲットの魅力に取り憑かれて8年が過ぎようとしていますが、いまだにバゲットを焼くたびに新しい気づきや発見があります。
自分にとってどのようなバゲットが理想なのか?理想のバゲットを焼くためのベストなバランスはどこにあるのか?こういったことを考えながら試行錯誤することがバゲット焼きの魅力のひとつなのではないかと感じています。ぜひバゲットを焼く際の相関関係を押さえながら、マイベストのバランスを見つけてみて下さい。
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