これまで17℃という低温でゆっくり18時間発酵するバゲットを作ってきましたが、ひょんなことから90時間という、かなり長時間発酵させたバゲットを焼いてみる機会がありました。レシピ自体はいつもの低温長時間発酵がベースなのですが、この90時間発酵バゲットがとても風味豊かで味わい深いバゲットになりましたのでご紹介したいと思います。
風味豊かで味わい深い90時間発酵バゲットのレシピ
準強力粉(シェリジー・トラディションT65)60%、準強力粉(モンブラン)40%、硬水(コントレックス)23.8%、軟水(水道水)46.2%、塩2%、インスタントドライイースト0.025%、ユーロモルト0.8% ※家庭用オーブンでバゲット2本仕込みであれば、粉量は300g程度が目安
硬水(コントレックス)と軟水はあらかじめブレンドしておき冷蔵庫で冷やしておきましょう。特に夏場は室温も上がるので、粉も冷蔵庫で冷やしておくと捏ね上げ温度の上昇を抑えることができます。
準強力粉はシェリジー・トラディションT65とモンブランをブレンドして使用していますが、フランスパン用の準強力粉であれば問題ありません。インスタントドライイーストは、あらかじめ粉とよく混ぜておきましょう。
硬水と軟水をブレンドした水70%の中に塩2%、ユーロモルト0.8%を混ぜ合わせます。ユーロモルトはミキシング前に分量内の水でしっかり溶かしておきます。
ミキシングは3分間 材料が均等に混ざったら終了
ミキシングは3分間行います。ここでのミキシングのゴールは「材料を均等に混ぜること」ですので、グルテンを出すためにミキシングをするわけではありません。グルテンはミキシング後のパンチと長時間発酵の中でゆっくり形成していきます。
ミキサーから取り出した生地は軽く丸めておきましょう。家庭用オーブンでバゲット2本仕込みであれば、この時点で2つに分割しておくと成形の時に綺麗な正方形に広げることができます。私はこの時点で2つに分割しています。一次発酵終了後の分割作業が省けますので効率的です。
ミキシング・分割が終わったら、ボウルに移しラップをします。ラップは100円ショップで購入できるシャワーキャップに輪ゴム止めが使い勝手よくおすすめです。15分後にパンチを1回目を行い、その15分後に2回目のパンチを行うことでグルテンをつなげていきます。この間の生地の保管ですが、室温が20度くらいであればそのまま室内でも問題ありません。しかし、夏場は室温が26〜28℃くらいになることが多く発酵が進みやすくなってしまうため、この時点で17℃の保冷庫に入れて保管することをおすすめします。
1次発酵は17℃で18時間発酵させた後、4℃程度の冷蔵庫に移し72時間熟成させます。微量のイーストで発酵させているため、4℃程度の冷蔵庫の環境下ではほとんど発酵は進みません。18時間経過時点での生地の発酵膨倍率は2倍程度でその後90時間経過後も大きく変わりません。
一次発酵終了後はラップをしたまま室内で5〜10分復温させてから成形作業へ
一次発酵終了後、冷蔵庫から取り出した生地は4℃とかなり冷たくなっているため、ラップをしたまま室内で5〜10分復温させましょう。この時に必ず「ラップをしたまま」にすることがポイントです。特に夏場は室温・湿度ともに高いため、室温と生地の温度差によって生地表面に結露が発生してしまいます。
成形はボウルから生地を取り出したら綺麗な正方形を作ることがポイントです。エッジが美しいクープを出すためにはこの成形作業がとても重要になります。成形については別の記事でも詳しく解説しているので参考にしてみてください。
最終発酵は室温で約30分 夏場は室温が上がりすぎないように注意が必要
最終発酵は室温(20℃~24℃)で約30分とり、その間にオーブンを最高温度で予熱しておきます。最終発酵のポイントは、生地表面をわずかに乾燥させるのがポイントなのですが、夏場はどうしても室内の気温が26~28℃、湿度も60%以上になり、生地表面をわずかに乾燥させるどころか温度上昇で生地がダレたり湿気でベトついたりしてしまいます。ですので、できれば室内はエアコン(除湿モード)を使い、室温は24℃以内、湿度は45%以内にすることがベターです。どうしても室温や湿度が上がってしまい生地がダレるようであれば、最終発酵のラスト5分は生地ごと冷蔵庫に入れることをおすすめします。そうすることで生地ダレを抑制し、クープ入れをしやすくします。
最高温度での予熱が終わったら、さらに下火を強化するためにストーンプレートに加熱を行います。美しいクープと蜂の巣状の気泡たっぷりクラムに仕上げるためには、遠赤外線効果の高いストーンプレート使って生地に一気に火を入れるのがポイントです。※ただし、危険が伴いますのでくれぐれも自己責任で安全第一でお願いします。
窯入れ前にスチーム発生用の熱湯を100cc準備します。切れ味の良いクープナイフでクープを4本~5本いれて、素早く窯入れをします。窯入れ後は準備しておいた熱湯100ccをオーブン床に注ぎスチーム発生させます。窯入れ後の最初の3分は最高温度で焼成し、オーブンキックさせます。窯入れ後に熱風による乾燥を防ぐためにオーブンをOFFにするやり方もありますが、それはオーブン内の温度低下によるオーブンキック力の低下につながってしまうため、オーブンはOFFにせずONのまま3分間最高温度で焼成します。
3分経過後は220℃に温度を落として約24分焼成します。途中に焼きムラを防ぐために生地の向きを変えてあげます。焼成時間はトータルで約27分です。窯出しした後、焼き上がったバゲットからパチパチと音がしたら水分がほどよく飛んで良く焼けた証です。微量イーストで発酵しているため、生地中の糖の消費が少なく、クラストの焼き色は濃い飴色になっています。
食べてみると、いつものバゲットよりも風味豊かで味わい深いであることが確認できると思います。バゲット焼きの奥深さを改めて感じさせてくれます。
いかがでしたでしょうか?今回は風味豊かで味わい深い90時間発酵バゲットのご紹介をさせていただきました。焼き上がり時間を逆算して仕込む日や時間を調節するのは大変ですが、この風味豊かで味わい深いバゲットをぜひ一度体験してみてはいかがでしょうか?
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