バゲットを焼くと、「バゲットがうまく焼けない!」と思うことがありますよね。私も毎回バゲットを焼く度に「うまく焼けない!どうして?なぜ!?」と頭を悩ませていた時期がありました。そこで今回は、私が試行錯誤した経験から「バゲットがうまく焼けない場合にチェックすべき8項目と対策」をまとめてみましたので、バゲットをうまく焼きたい!と思う方へ何かご参考になればと思います。
チェックその①ミキシングし過ぎている
バゲットはミキシングによってグルテンを出す必要があまりないパンです。ミキシングし過ぎてしまうとグルテンが強くなりすぎてしまい、クラムに気泡が出なくなってしまいます。また、ミキシング時間が長くなることで、捏ね上げ温度が上がってしまうと味や風味にも影響してきますので、ミキシングは最低限に抑えることをおすすめします。
対策→ミキシング目安時間は3分。材料が均等に混ざればOK。グルテンを出す必要はない。
チェックその②イーストを入れ過ぎている
イーストを1~2%ほど入れてしまうと、短時間で膨らみますが生地の熟成がされていないため、生地がパサつくことがあります。また、イースト量が多いと糖の消費がされ過ぎるため、甘みや旨みが損なわれてしまいます。私の場合はインスタントドライイーストを0.025%とかなり微量なイースト量で生地を仕込んでいます。焼き上がりの時間計算もありますが、多くても0.1%程度に抑えてゆっくり発酵させると生地も熟成し、小麦粉中の糖の消費が抑えられて甘みや旨みを感じることができます。
対策→微量イースト製法にする。イーストは0.1%以下に抑えてゆっくり発酵させると生地が熟成されて旨みや甘みを感じられる。
チェックその③発酵温度が高い
発酵温度が高いとイーストが活性化し過ぎて小麦粉中の糖の消費がされ過ぎてしまいます。その結果、甘みや旨みを感じられなくなってしまいます。また、糖の消費が多いと焼き色が付きにくく、焼き色を付けるために焼成時間が長くなるとクラストが厚くなってしまいます。私の場合、発酵温度は17℃で18時間、イースト量は0.025%で発酵させます。17℃をキープするためには冷温庫を使用するのですが、持っていない方は最初に常温である程度発酵させた後、冷蔵庫でオーバーナイトさせる方法もあります。
対策→17℃の低温でゆっくり発酵させる。もしくはある程度常温発酵させたあと冷蔵庫でオーバーナイトさせる。
チェックその④一次発酵で生地を作りきれていない
当然のことながら、発酵がアンダーだと焼成時に生地が膨らまず、クープも開きません。そのことは理解していると思うのですが、微量イーストの低温長時間発酵やオーバーナイトを行うと、その見極めがしきれずに失敗してしまうことがあります。バゲットをうまく焼くためには、一次発酵でしっかりガスを含んだ生地を作ることが重要ですので、発酵膨倍率が2倍~2.25倍になるまでしっかり発酵させましょう。
対策→発酵膨倍率が2~2.25倍になるまでしっかり発酵させる。
チェックその⑤成形時の巻きが弱い
成型時の生地の巻きが弱いとクープの開きが悪くなってしまいます。どれだけ一次発酵でしっかり生地を作ったとしても、成形がうまくいかないとエッジの立ったきれいなクープはできません。私の場合、成型時にはまずきれいな正方形を作り、そこから3つ折りを行い、その後くるくる3回巻きを行います。成形のコツは別の記事で詳しく解説していますので、ぜひご覧いただければと思います。
対策→きれいな正方形を作り、そこから3つ折り、くるくる3回巻きを行う。
チェックその⑥クープ入れの深さが浅い
クープ入れをする際に力の入れ具合が分からず、クープ入れを躊躇してしまったり、慎重になり過ぎて薄皮しか切れていないことがあります。クープ入れの深さが浅いと、焼成時にすぐ表面が焼き固まってしまいクープが開かないことがあります。私の場合、クープ入れをする際に、成型時に巻いた1枚分の生地の厚さを切るイメージで、スパッと勢いよく入れます。
対策→成形時に巻いた1枚分の厚さを切るイメージでスパッと勢いよく入れる
チェックその⑦オーブンの温度が低い
バゲットは窯入れ直後の5分でクープの出来が決まります。特に下火の温度が低いとオーブンキック(生地に熱が入り内側から膨らむ)までに時間がかかってしまい、その前に生地外側の表面が焼き固まってしまうことでクープが開かなくなったり、クラムの気泡が出にくくなってしまうことがあります。家庭用オーブンは火力が弱く、特にバゲットを焼くには下火が弱いため、私は下火を補強するためにストーンプレート(溶岩プレート)を使用しています。ストーンプレートにしっかり熱を入れるためには予熱に1時間くらいは必要です。ガスコンロで別途加熱する方法もありますが、くれぐれも火傷にご注意いただき自己責任で安全第一でお願いします。
→ストーンプレート1時間余熱するかガスコンロで追加で熱して下火を補う
チェックその⑧スチーム量が足りない
窯入れ時のスチーム発生を霧吹きで行なっている人も多いと思いますが、霧吹きを数回行なっただけでは量が足らず、すぐに表面が乾燥して焼き固まってしまい、クープが開かなくなってしまうことがあります。また、霧吹きを数回している間はオーブンの扉を開いていますので、オーブン庫内の温度が下がってしまうことでオーブンキックに時間がかかってしまうことがあります。私の場合は、沸騰したお湯70ccを準備し、生地を入れたら素早くオーブンの床に熱湯を注いでスチーム発生させています。扉を開けている時間の短縮にもなるのでおすすめです。
対策→70ccの熱湯をすばやく床に注いでスチーム発生させる。
今回ご紹介したチェック8項目以外にも、加水量やモルト量、最終発酵時間などバゲットをうまく焼くための細かい要素はありますが、まずはこの基本的な8項目をチェックしていただき、改善を図ってみてください。
いかがでしたでしょうか?バゲットを焼くとほとんどの人が「うまく焼けない!どうして?なぜ!?」と頭を悩ませます。かく言う私もその一人で、一時期は狂ったようにバゲットを焼いて繰り返し試行錯誤を行なっていました。バゲットはパン作りの中で最も難易度が高いパンなのではないかと思います。ですので、最初はうまく焼けなくて当然なのです。
私が思うバゲット焼きの醍醐味は、バゲット焼きを通じて自己成長を感じられることだと思っています。「うまく焼けない!どうして?なぜ!?」から始まり、「次回はここを改善するとうまく焼けるのでは?」と言う仮説を構築し、実際に改善策を試して見ることで「改善された!理想に近づけた!」と言う喜びや成長感を感じるプロセスがバゲットを焼くモチベーションになります。
この記事を読んでいただき、「よし!次はここを改善しよう!」とバゲットを焼くモチベーションになっていただけたら幸いです。私も美しさを美味しさを今後もさらに追求していきたいと思います。
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