小麦の香りと旨味を感じるハードトーストの作り方

今回は、小麦の香りと旨味を感じるハードトーストの作り方をご紹介したいと思います。まずハードトーストとは、バターや砂糖を使わず、小麦粉とイースト、塩、水だけといった、とてもシンプルな材料で作る食パンのことを言います。それゆえに、シンプルな材料で食パンの必要条件である上方向にふかっとボリュームを出すためにはコツが要ります。そのコツについて分かりやすく解説していきたいと思います。

小麦の香りと旨味を感じるハードトーストのレシピ

最強力粉(ゴールデンヨット)100%、硬水(コントレックス)38%、軟水(水道水)38%、インスタントドライイースト0.2%、塩2%、ユーロモルト1%

※レーズン種やルヴァンリキッドを使うとさらに香りや風味が良くなるのでおすすめです。レーズン種とルヴァンリキッドを使用する場合は、硬水(コントレックス)36%、軟水(水道水)36%、レーズン種4%、ルヴァンリキッド2%、インスタントドライイースト0.1%で仕込んでみてください。今回はレーズン種とルヴァンリキッドを使って仕込んでいます。

ハードトーストのコツはミキシングでグルテンを最大限に引き出すこと

あらかじめユーロモルトは仕込み水で溶かしておき、硬水・軟水・塩・ユーロモルトを混ぜ合わせておく。ミキサーに粉・水・イースト(レーズン種・ルヴァンリキッド)を投入し、全体で約30分間ミキシングをする。スピード調整ができるニーダーの場合は、最初の5分は低速、5分後は中速でミキシングをする。スピード調整できない場合は、最初の10分ミキシングした後、2分間インターバルをとって10分ミキシング、3分間インターバルをとって5分ミキシングをし、インターバルを含めて30分間とるようにする。※30分間連続で高速ミキシングするとグルテンの破綻を招く恐れがあるため、私はインターバルをとって生地を休ませながらミキシングしています。

ミキシング後半はグルテンの破綻に注意を払う

高加水の生地のため、ミキシング後20分間は生地がベタつきまとまらない状態が続くが、20分を過ぎたくらいからグルテン形成によって生地がまとまり、弾力が出てくる。ミキシング30分でほぼ最大限のグルテン形成ができるが、ミキシングが強すぎるとグルテンが破綻してしまうので、生地の弾力やまとまり具合を良く観察し、グルテンが破綻する兆候(弾力の低下・生地の分離など)が現れたらすぐにミキシングを終了する。※ミキシング終了後、私はこの時点で生地を2つに分割してしまいます。分割しておくと翌朝の成形作業がラクになります。

ボウルに移した後はシャワーキャップを被せるかラップをして乾燥を防ぐ。20分後に1回目のパンチ、その20分後に2回目のパンチを行い、生地にボリュームと張りを持たせる。1次発酵は20℃で約7時間発酵させる。発酵膨倍率は約2.5~3倍。※ハードトーストはバターや砂糖を使わない生地のため、焼成時に上方向に立ち上げるためには、ここでしっかりガスを含んだ生地に仕上げることが重要。

パンチ終了後の生地
20℃で7時間発酵させた生地

発酵で醸成される香りを残すためにあえて気泡を残す成形に

成形は1次発酵で醸成されたガスの香りを残すために、シニフィアン・シニフィエ志賀さんの突き丸めで成形。あえてクラムに気泡を残す成形がおすすめ。もちろん、通常通りめん棒でガスを抜き、山食のように端を折り返してクルクル巻きでもOK。

丸めた生地を食型に入れたら、30℃で約90分ほど最終発酵する。焼成する時間の30分前くらいにはオーブンを最高温度で予熱しておく。※私はさらに下火を強化するためにストーンプレートを別途加熱を行っています。ストーンプレートを使用する際には、くれぐれも自己責任で安全第一でお願いします。

生地は食型の上まできたら焼成に入る。焼成時は多めにスチームを入れる※窯入れ後に食型に水滴が着くくらいの蒸気量が目安。オーブン容量よって異なるが大体50~70ccくらいが適量。窯入れしたら210℃に温度を下げて全体で約35分焼成する。途中で焼きムラを防ぐために位置を変える。焼き色が濃くつきそうな場合は温度を200℃に落とす。

焼きあがったハードトースト

スチームを入れて焼成するため、艶のあるクラストに仕上がる。

艶のあるクラスト

艶と透明感のあるクラムが高加水のハードトーストの特徴

高加水で仕込んだ生地のため、焼成時に小麦粉中のデンプンが糊化して艶と透明感のあるクラムに仕上がる。加水を増やせばより艶と透明感のあるクラムに仕上がるが、その分グルテンが弱くなるためクラム上部に穴が空きやすい。そのバランスを取るのがこのハードトーストの難しいところであり、面白いところ。

艶と透明感のあるクラムは高加水の生地の特徴
艶と透明感のあるクラムは高加水の生地の特徴
方でクラムに大きな穴が空きやすいのでバランスを取るのが難しい
一方でクラムに大きな穴が空きやすいのでバランスを取るのが難しい

いかがでしたでしょうか?ハードトーストは、シンプルな材料で作る山食のため、ごまかしが効かない上級者向けのパンですが、トライアンドエラーを繰り返して練習すれば必ずうまく焼けますし、もっちりした独特な食感は何度食べても飽きのこない満足度の高いパンだと個人的には感じています。レーズン種やルヴァンリキッドを使用すれば、風味豊かでほんのり甘さを感じられますので、ぜひ自家製酵母作りにもチャレンジしてみてください。

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