レスペクチュスパニス製法っぽい?バゲットを焼いてみて分かったこと

最近バゲットの製法として注目されている新しい製法があります。それは「レスペクチュスパニス」という製法です。この言葉を聞いても想像がつきにくいかと思いますが、レスペクチュスとはリスペクトを意味し、パニスとはパンを意味するようで、つまり「パンへの敬意を込めた製法」を指しているようなのです。バゲットマニアならどうしても気になってしまうのは当然のことですよね。しかし、レスペクチュスパニスの本は8,000円とかなり高めなので購入するのに逡巡してしまいます…。

今回は、完璧なレスペクチュパニス製法でバゲットを焼いているわけではないのですが、私が様々な情報収集を行った中で「レスペクチュスパニス製法っぽい?」バゲットを焼いてみた結果、そこから得られた様々な気づきや発見をレポートしていきたいと思います。

レスペクチュスパニス製法の特徴とは?

レスペクチュスパニス製法はその名の通り「パンへの敬意を込めた製法」となっていることが特徴です。どんな敬意を込めているのか?その敬意が具体的な製法としてどのように反映されているのか?という部分が気になるところですが、残念ながら私はまだ本を購入していないので真意は分かりません…。

ただ、製法の特徴としては、『小麦粉はT80をブレンドして使用する』、『ミキシングは最低限』、『塩は1.5%程度に抑える』、『一次発酵は18℃で18時間』というような特徴があることから、小麦自体に敬意を込めて『小麦本来のポテンシャルを最大限引き出す』ことに製法の主眼が置かれていることがうかがえます。だからこそ、小麦の胚芽に含まれるミネラルやビタミンを活かすためのT80ブレンドや、風味を活かすための低ミキシングや低塩分、小麦の酵素を活かし、甘みや香りを引き出すための一次発酵の仕方などが製法として取り入れられているのは合点がいきます。

レスペクチュスパニス製法っぽい?バゲットのレシピ

今回は上記の製法の特徴を踏まえてアレンジした「レスペクチュスパニス製法」っぽいバゲットに挑戦したいと思います。T80の代用として微粒全粒粉を使い、塩は1.6%で調整します。

準強力粉(ラ・トラディション・フランセーズ)60%、準強力粉(モンブラン)20%、微粒全粒粉20%、硬水(コントレックス)23.8%、軟水(水道水)46.2%、塩2%、インスタントドライイースト0.025%、ユーロモルト0.8% ※家庭用オーブンでバゲット2本仕込みであれば、粉量は300g程度が目安

製法の特徴である『小麦粉はT80をブレンドして使用する』を実現するために、今回は微粒全粒粉で代用することで、小麦粉全体の灰分は0.71%まで増加しています。ですので、粉がいつもより茶色っぽくなっています。

微量イースト&低温長時間発酵バゲットの詳しいレシピはこちら

焼き上がったバゲットの甘みはいつもと変わらず、味や香りはかなり強め

まずは焼き上がったバゲットの外観から見ていきます。外観はいつものバゲットと大きく違いはありません。小麦粉自体はいつもより茶色でしたが、それがクラストの焼き色に大きく影響はしていません。強いていうならば、微粒全粒粉のたんぱく量が多いため、いつもよりもボリュームが出ています。この点については大きな変化ポイントです。

続いて、クラムを見ていきます。まず決定的な違いはクラムの色です。クラムはクリーム色というよりも、茶色に近い色になっていました。これは微粒全粒粉を20%ブレンドしているので当然といえば当然なのですが、見た目のインパクトは結構ありました。

見た目のレビューはこのくらいにしておき、気になるその味や香りについてお伝えしたいと思います。

まず、「甘み」についてです。レスペクチュスパニス製法のバゲットは「甘い」と言われていますが、私がいつも行っている微量イースト&低温長時間発酵製法のバゲットの甘みとほとんど変わりはありませんでした。発酵時間や温度帯がほぼ同じなので、当然といえば当然なのですが…。

続いて「味」と「香り」についてです。全粒粉に含まれる表皮や胚芽の影響で、香ばしさはかなり強く出ています。この点はレスペクチュスパニス製法の『小麦本来のポテンシャルを最大限引き出す』コンセプトが反映されているポイントだと感じました。本場フランスのバゲットやカンパーニュを食べたことがある人であれば、あの時に感じた「フランスの風」のようなものを感じれるかもしれません。また、野性味あふれる香ばしさが好みの方にはおすすめの製法だと感じました。

一方で、いわゆる日本の一般的なバゲットに慣れ親しんでいると、表皮や胚芽特有のえぐみが気になってしまうかもしれません。私の家族(妻や子供)はこちらに当てはまる方でした。ですので、「バゲット」として食べると、そこに「GAP」を感じてしまうかもしれません。

発想の転換で、レスペクチュスパニス製法を活用してみる

先ほど、「バゲットとして食べると、そこにGAPを感じてしまう」と述べましたが、その理由は、「見た目はバゲットだけど、味はカンパーニュっぽい」という点にあります。視覚はバゲットと認識しているのですが、味覚や嗅覚がカンパーニュと認識している点にGAPが生じているからです。

であれば、「レスペクチュスパニス製法でカンパーニュを作ってみたらGAPは解消されるよね?」ということで、レスペクチュスパニス製法のレシピそのままに、成形をカンパーニュにしてみたところ、これが結構良い感じだったのです。

カンパーニュに気泡を作るコツはこちら

なぜかというと、通常のカンパーニュは粗挽きの全粒粉を使うことが多く、うちの子供(小学校低学年、幼児)にとっては少し食べづらいのですが、今回は微粒全粒粉を使用しているため、「キメが細かく口当たりの良いカンパーニュ」に仕上げることができたのです!うちの子供も「おいしい」とパクパク食べていました。

また、カンパーニュにすることで、「見た目と味のGAP」は解消し、むしろ「カンパーニュなのに上品な口当たり」という良いGAPも副産物として作り出すことができました。

ですので、レスペクチュスパニス製法でのバゲットも特徴があって良いのですが、家族で楽しむという観点においては、レスペクチュスパニス製法でのカンパーニュもおすすめです。ぜひ、自分にあったレスペクチュスパニス製法でのパンを見つけてみてください。

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